魅力的な悪役

前回の魅力的な主人公に続いて、今度は悪役。でも魅力的な悪役の定義は主人公ほどにはありません。というのも自由だから。悪役には正義や道義心とか共感といった縛りがない。だから冷酷で引くようなキャラクターから同情の要素があるようなキャラまで千差万別。

ただ悪役は自由といっても、やっぱり物語の世界観のレベルに応じたバランスがとられています。恋愛ものの悪役は主人公とその相手の仲を引き裂いたりひどいことを言ったりしても殺人はしません。逆に殺人ドラマの悪役は、若い二人の恋路を邪魔する悪口を吹き込んだりチマチマした小細工なんてしません。きっとヒロインをさらっていろいろとしちゃう方向に行くでしょう…。

悪役たるもの死んでも改心するべからず

私は正義の味方は見ていてムカつくタイプなので悪役の方が大好きなのですが、その中でも好みがあります。私にとって理想の悪役を語ると――、悪役には変に同情できる要素とかいりません。悲惨な家庭環境とか不幸設定も大好物ですがそれは別の物語でやりましょう。主人公にやられる寸前に改心して良いヤツになる悪役はサイテーです。カッコ悪く命乞いもしちゃ駄目です。助けてやるって言われても手を出してはいけません。クールに非情なままやられてください。何なら潔く自決してください。そんなブレない悪役が大好きです!

けどまあ改心する悪役のフォローをすると、そういう悪役は若い世代向けの健全な物語に多いのです。要するに子供向けの物語で非情で卑怯な悪役が手加減せずだと、見ている視聴者の子供たちにトラウマを植え付けてしまうから。だから悪役も根っこはいい人で最後に主人公を助けたりって性善説で話が作られていたりします。話のどこかに救いがあると。

そして悪役に同情できたり納得できる動機付けがあるのはミステリーや推理系。趣味で連続殺人してましたってサイコ系の犯人だと推理小説のオチになりませんからしょうがない。まあどこかにはそんなオチもありそうだけど。でもミステリーの犯人であっても、不条理に殺された誰かの復讐劇であっても、悪役ならば刑事の説得にほだされず、潔く崖からダイブしてほしいです。死んだ○○さんだってきっとそれを望んでるはずだ!←他人事だからって無茶言いすぎ。

Would [your father] want you to do this?
余談ですが、犯人悪役に限らず、この「死んだ○○さんだってそんなことは望んでいない/こんなことをして喜ぶと思うか」系の説得は私が嫌いな台詞の上位に入るんですが(おい)、こう説得して復讐を止めさせるのはアメドラでもよく出てきます。たぶん他の国でも同じでしょう。私が○○さんだったら復讐してほしいし、復讐させてやれよ!と見るたび思うんだけどー?→だから私は正義の味方でも手加減しないし時には復讐してくれる『The Equalizer イコライザー(テレビ版)』みたいなのが好きなのです。

年齢制限ありのバイオレンスとかだと手加減したら自分が死ぬから血まみれドロドロで戦ってたりします。けど私はバイオレンスはあまり好きじゃない…。単純に見ていて痛いのはヤダもん。←我がままです。ただ暴力ばかりで内面が見えないのはヤダけど、言動に哲学があれば好きかも。

滅びの美学

ということで悪役に必要なのは哲学です。美学です。犯罪小説だと悪役側が主人公で捕まらないまま逃げ切って終わりって話もありますが、大体の悪役は主人公に倒されるための存在です。死ぬか捕まるか。破滅が前提だからこそ、筋が通った生き方・死に方をしてほしい。そういう悪役だからこそ見ていてスカッとしたり切なくなったり好きなんだよね。――って、己の好みを力説しすぎです。

魔性の女

ノワールの「ファム・ファタール」とか、もう大好物です。可憐で儚げな美女が主人公を利用して悪だくみをしているとか、けどマフィアのボスに問い詰められて寝返っちゃうとか。男の悪役が女にうつつを抜かして失敗するダサいシーンや目的がブレるのは興醒めですが、美女だったら許す。←男性差別。そしてそんな彼女の闇に気づきつつ翻弄されてドツボにはまる主人公とか最高です。

一方で強い悪女も大好きです。この手のキャラで有名なのは映画『Romeo Is Bleeding(蜘蛛女)』ですが、元はゲイリー・オールドマン主人公の刑事の物語で原題はそっちなのに、 レナ・オリンが演じたロシアンマフィアの悪女が強烈すぎて邦題は取られてます。刑事を色気で籠絡しつつ、邪魔者は惨殺しまくりでマフィアのドンに煙たがられて消されそうになって、偽装のために片腕切り落としてまでして逃げてるからね。勿論、マフィアも刑事も周りみんな復讐されて不幸になってます。これ1993年の映画ですが、今でも男女問わず悪役の中では最強だと思います。でももっと強くてカッコいい悪女の話があったら教えてください。

というわけで、こっちは単に自分の好みを延々語っているだけという。だってほんとに悪役が好きなんだもん。